追いかけられると逃げたくなるタピオカ

自分のもとから逃げていくものを追いかけたくなってしまうのは人の性なのだろうか。

どうしても手に入れたいものが、あと少しで手が届きそうになった瞬間、指の間をするりとすり抜けて遠くへ行ってしまう切なさ。

次こそは君を手に入れて見せる…

 

 

これはタピオカの話です。


久しぶりに、タピオカ入りの飲料をコンビニで買ってしまった。

ココナッツミルクを始め、カフェオレやミルクティーといった不透明の液体の中で息を潜めているブラックタピオカは、カップを振るとちらっと黒光りするその一部を見せて、また深いミルクの海に隠れてしまう。

その時点で私の狩猟本能がキュゥッと刺激され、もう気持ちはブラックダイヤモンドを狙うハンターである。

第一、ドリンク棚の一番高いところから我々を見降ろして鎮座しているところが一筋縄ではないぞ、という感じを与える。神を気取っている。

我々を挑発しているとしか考えられない。その挑発度は冬の自販機にあるコーンスープ缶とおしるこ缶とも肩を並べるレベルだろう(彼らも豆やコーンあとひと粒が取れそうで取れない、という秘技を使ってくる)。