観察

最初にあったとき、赤い靴を履いていたから赤が好きなのかと聞いたら、特に拘りはないからあんまり聞かないでと言っていた。その後黒い服装でまとめてきて、本人は赤が好きだと思われるのが嫌だったそうだ。あるときに顔色が青白く怠そうに髪をかきあげたりしていて、心配だった。前日に辛いことがあって、何か吸ったのかなと思った(いつも好んで葉っぱモチーフを好んでいるし、そのことについて触れたらその効能について生き生きと話していたから。オランダに行きたいとも。)その雰囲気にすごく色気を感じたので声をかけずに見ていた。

透き通って綺麗な白目と、黒く濡れた瞳を持っている。

2015 0204

油画試験だった。

デッサンのときのモチーフとは打って変わって色が鮮やか。描きどころがない。かけない。ここで普段描きたい物だけ書いているという態度のボロがでてしまったということだろう。

やはり自分は本番に弱い、というかいつも予備校では出来ることとか評価されることの方ばかりに目を向けて出来ないこと=やりたくないことをやらないので応能が効かない。


お昼はS氏と食べた。「高校卒業してから、いまの自分は死んでんのかなっずっと思ってて、でも予備校きたら楽しくて、だからずっと絵を描きたい」と言ってて、その純粋な上向きの気持ちにすごく希望に輝くものを感じて、私もその光を浴びる恩恵にあずかることができた。

Sくんはその場の雰囲気だとか感じたことを行動の指針にしているところが自分と似ている。

同じ予備校にかつて通っていたy君の予ブログを読んでから、彼はaさんのことばかりを口にするようになっているので、少し嫉妬してしまう。会ったことがないけど、とても気になるらしい。物語の女の子に恋をしているのと同じかな。口に出してしまうってことは、きっと試験中ずっとaさんのことを考えていたんだろうな。


S氏の雰囲気は好ましい。具体的にどこがと言われると…性格。生き方からくる繊細さと優しさ。わたしにはない物。綺麗な白目と細い指。動き。歩くときの音。辛さと痛みを経験したからこそ自然にできる人への共感と心の寄り添い。素直さ。自分を許容して半ば諦めたようなところ。弱さ。弱さが好きなのかも。でも自分がS氏に想われたいこととはちょっとちがう。私が一方的にS氏について思って、その気持ちが溢れちゃうだけだ。触ってみたい、知りたいという好奇心もある。S氏は自分より若いけどより中身のある生き方をして色んなことを考えてきた。だから自分よりはるかに大人だし、同じような人間性を感じてaさんに惹かれているんだと思う。

S氏は予備校一年目だけど、私が初めてここに来たとき、あんなに素直に色々吸収していこうという気持ちがあっただろうか。自分に根拠のない空回りの自信と驕りがあって、他人を拒否して自分だけを上に持って行きたかった。でもそれじゃ駄目だった。限界があった。そんなことでは人の心に近づいたり、痛みを共有することはできなかった。いくら実力があっても自分の根本がからっぽだから。

2015年は自分のからっぽさ空虚さを実感する年だった。それは私が自分の世界に閉じこもってちゃんと現実の自分の在り方とか人との大切な関わりを持つことをサボって来たから。他人に触れることによって自分のからっぽさと無能さと空虚な生き方がばれて、色んな人に見限られるのが怖い。欠点だらけで継ぎ接ぎするしかなかった自分の裸を見られるのが恥ずかしい。こういう風に内省して自分について考えるのが嫌だ。欠点を認めたくない。でも認めなきゃいけない。

私はきっとS氏には、楽な話し相手、くらいにしか思われていないし、心を見せられる相手ともまだ思われていない。そして私は誰の記憶にも残ってない。空の風船はたくさん飛んで、その中に紛れて浮遊してるだけだ。

私が氏に惹かれる気持ちは好奇心で短期のものかもしれない。触って感触を確かめて、ちょっと味見で齧ったらすぐに飽きてしまうかもしれない。でもとても気になるし、彼がaさんの事を考えていたように私も試験中にずっとS氏のことを考えてしまう。興味が好意になっていくのを感じる。彼のもつ雰囲気にすごく惹きつけられてしまう。だから会話中の沈黙の間に、この人の代わりにaさんと話したいな…aさんってどんな人なんだろう…と考えているのがありありとわかって、かなり辛かったし切ない。私と話してるんだから私をみて欲しいけど、見つめられて耐えられるほどの自己は無い。無い。何も無い。だから私は彼が話すことに曖昧に頷いたり愛想笑をしたり、体しておもしろくもない話を続けることしかできなくて苦しい。嫌われそうで怖い。この人に嫌われたくない。目を伏せたり、会話が切れたときに、飽きないで!もっと君好みになるから!と思って切なくなる。でも今日は、むこうから見つけて話しかけてくれたし(嬉しくて逆にサバサバ対応しちゃったけど)昨日一緒にお昼を食べた所にまた居てくれたし(待って居てくれたとは言い過ぎかもしれないが話し相手がいたら自然の行動だし深い意味は無いのかもしれない)、嬉しかった。

私は好意ある人が向こうから歩いてくることに気づいても気づかない振りをして向こうが話しかけてくれるのを待って試してしまう。

結局今日は

絵を描くのに汚れた道具とか、やたら本数の多いパレットとか、いらないと思ってる。筆一本でも絵の具一色でも、良い絵はかける。ということで同意した。